3月20日 国際児童青少年演劇の日によせて
一般社団法人 国際児童青少年舞台芸術協会 日本センター
会長 後藤 圭
本日3月20日は「国際児童青少年演劇の日」です。
この場合の「演劇」は、本来は「舞台芸術」全体を指します。ですから「国際児童青少年舞台芸術の日」と呼ぶのが正しいのです。そして、アシテジインターナショナルが制定して始まった児童青少年舞台芸術に関する啓発をする日です。
舞台芸術というものは実演芸術です。演劇、人形劇、影絵、あらゆる種類の演奏、ダンス、手品、パントマイムなどそれは多岐にわたります。子どもの時代にこうした実演芸術と接することは実は子どもにとってとても大きなプラスがあります。それについてお話ししましょう。
1.子どもに実演芸術を届けること
子どもにはたくさんのものが必要です。着るもの、食べるもの、遊ぶこと、親の愛情、生きていくための様々な知識・・・。数え上げればきりがありません。現代の日本の社会はあらゆる意味で豊かです。その豊かさは私たちの先祖が営々として築いてきた基盤の中から生まれて来たに違いありません。ですから私たちは、先祖たちが築いてきてくれた社会を、より良いものへと発展・進化させていく責任を持っています。今、私たちの豊かな社会にプラスしていかなければならないものは、柔軟な心の育成、心豊かな社会の構築です。
そのために、子どもに必要なたくさんのものの中に、ぜひ実演芸術を加えて欲しいのです。アートこそは人間の生活や文化の中で大きくて特異な位置を占めるものです。ある意味でアートは「直接は、生きていくためには役に立たないもの」であり「すぐには必要のないもの」であるかもしれません。ではなぜ人類はアートを作り続けてきたのでしょう?なぜ役にも立たない行為を続けてきたのでしょう?それは、アートこそが人間にとって必要なものだからではないかと、思うのです。
2.空想の翼を広げて
こうしたい、こうありたい、もしかしたらこんな事が出来るかもしれない。人は皆様々な希望や願望、夢を持っています。その中の幾つかが、誰かの人生の中で結実し、具体化します。そうやって社会は少しずつ発展していきます。ですから人々(特に子ども達)が大きく壮大な希望や夢を持っている事が、より良い次の社会作りにとても大切なのです。その夢を育てるのがアートであり実演芸術(パフォーミング・アート)です。それに触れた子ども達は人間の可能性や面白さを実感し、自分の将来に夢を描く事ができるようになります。子どもには日常の他に、将来を夢見、大きな希望を持つ空想、想像の世界がとても必要なのです。
3.想像力は創造力へ
想像力は書籍や映画、他のアートジャンルでも育てる事ができるでしょう。しかしそこに生身のパフォーマーが存在し、目の前で演じられる実演は少し違った力を持っています。人は、人と触れ合う事でこそ、とても大きな力を受け取る事ができるのです。そして目の前で演じられる実演は、日常と非日常の知識の世界を繋ぐものです。子ども達には日々暮らしている日常と、無限の情報をつなぐ架け橋としての実演芸術が必要なのです。
想像してみてください。影絵や人形劇によって活力溢れる昔話を見た子ども達は、次に本を読んだ時に今までと違った景色が見えてくる様になるのです。そうやって知識や情報に命を吹き込む事が出来た時、子ども達の心の中に「想像力」を「創造力」へ転化していく新たな力が育っていくのです。
4.結びに
今述べてきた様に、アートや実演芸術には人間に欠かす事の出来ない大きな力があります。こうした力に子どもの頃から触れていく事が、「夢」や「希望」という、一人一人の人間の生きる力を育てていくのです。
力を伸ばし、夢を広げ、将来の自分たちを夢見る事は、きっと子ども達に私達の予期しない大きな力を育むものだと思うのです。
だから、子ども達にアートを届けるという事は、私たちの社会を心豊かにしていくためにとても重要な事なのです。
私たちは、3月20日「国際児童青少年演劇の日」をそのための大きなきっかけとして育てていきたいと考えています。